しまざきさん

怪しげな住まい

 館は雑木に包まれ四季の草花とともにさまざまな昆虫・鳥類が棲息する山草虫魚スペースとなっています。表札もなし看板もなし、地図にも掲載されていないとなると何をしている所かと考えてしまうではありませんか。
 歩をゆるめて館を眺めるに、左手は三つ葉の丘に桜、山吹と萩が用水にしだれて、その奥が雑木林。右手には楠の樹が糸杉を緑の壁として大きく立ちはだかり、その先でススキが揺らいでいる。中央スペースは無機質な玉砂利の広場となり、コンクリート水槽越しに館が黙然と建つ——公民館かプチ展示館かと思う人もいるみたいです。けれど日が暮れ、室内の灯が用水と樹木にこぼれだすと雰囲気が変わってきます。勤め帰りの男衆が連れだって「空いてますか」といきなり戸惑いもなく入ってくることがあります。割烹、居酒屋と思えたのでしょう。シマザキさんは番猫として、どお応対していいのかわかりません。